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「無限の力」ありがとう
先日こんな素晴らしい作品を知りました。
福祉協議会が実施した「介護作文コンテスト」優秀作品です。


「無限の力」ありがとう 

 白み始める空を仰ぎ、爽やかな空気を胸一杯に吸い込みながら新聞配達の仕事をしていると、「生きていてよかった!」と、素直な喜びを感じる。

 新聞配達の仕事も決して楽ではないが、激しい交通事故に遭って六年余の入院と介護サービスを受ける生活を余儀なくされ、否応なく社会からリストラされた私には、社会復帰してもういちど働けるというだけで幸せな気分になる。

 それは、紅葉狩りの帰りだった。赤信号で停車していたところに、居眠り運転のダンプカーが追突し、家族が乗っていた自家用車はペシャンコに踏み潰されてしまった。

 救急車に乗せられた私が意識を回復したのは、事故から六か月後のことだった。
複雑骨折した肋骨が喉からとびだし、手足の関節はバラバラで、小さな会社の社長としての仕事どころか、人間としての再起さえ不能の状態に陥ってしまった。

 私ひとりだけが生還したことによる心の痛みは癒しようもなく、度重なる検査や手術による肉体的な痛みが加わり、孤独感や絶望感から逃れるため、愚かな自傷行為を繰り返すという体たらくだった。
そんなある日のこと。療養施設の深夜の廊下から、優しげな歌声が聞こえてきた。

   ♪この坂を越えたなら
     ♪幸せが待っている

 そこには、私たち患者の洗濯や糞尿の処理までを手伝ってくださる介護サービス会社から派遣されたヘルパーさんの姿があった。

 毎日毎日、ただ死ぬことだけを考えていた私の背筋に激しい衝撃が走り、思わず頭を下げていた。

 そんなヘルパーさんの、見えないところでも努力をされている姿を目撃してからは、治療にもリハビリにも真摯な気持ちで取り組めるようになり、なんとか六年余の介護生活を卒業することが出来た。

 リハビリを兼ねて始めた新聞配達の仕事に疲れ切れて挫折しそうになったときには、そのヘルパーさんの姿が脳裏をよぎる。

 ご主人を亡くし、三人の子供を育てるために介護サービス会社に所属して夜勤の仕事に就き、「これが私の天職ですから」と笑顔で話してくれたその女性ヘルパーさんは、退院する私の肩をポンと叩きながら、こう話してくださった。

 「人間の知恵や技能は無限です。たとえ障害を持つことになっても、人間には無限の力が備わっています。どうか、ご自分に出来る仕事を、心を込めて続けていってくださいね。せっかく生かされた命なのですから」と。

 人間らしく生きることは本当に大変なことだ。しかし、あのときのヘルパーさんの笑顔と「無限の力」を信じて、ゆっくりと着実に歩いて行きたいと思っている。






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